大学生の頃は本当に麻雀ばかりしていて、ある時期、本当に入れ込み過ぎて学校に行けなかったことがあった。
その時の記憶が潜在意識に刻まれているのか、今でもたまに夢の中で「単位が足りない!」と焦って起きてしまうことがある。そのあとで「あっ俺卒業したんだよな」と安心するのだが、もう大学を卒業して十数年のが経過しているのに不思議なものです。今回紹介するのはちょうどその時期に読んでいた本。
麻雀の本というと小説では一般的には阿佐田哲也の「麻雀放浪記」とか、戦術書としてはミスター麻雀の小島武夫の本とか色々あるのだが、どちらかというと根が真面目ではみ出しきれない私は桜井章一の方に惹かれた。
麻雀好きの人で知らない人はいないと思うが、桜井章一とは言わずと知れた雀鬼会の会長で、現役時代は20年間無敗だったという伝説のお方。
阿佐田哲也の戦術書も読んだのだけれど、引っ掛ける麻雀戦術というか、騙し合いというようなニュアンスを感じて、私は麻雀をより一つ上次元で捉えていた桜井章一の方に惹かれた。実際に阿佐田哲也が桜井に全く歯が立たなかったというのも事実なのだと思う。
本書はみやわき心太郎という漫画家が桜井章一の運営する牌の音という雀荘に桜井を慕い集まってきた若者たちをクローズアップして、それぞれの生い立ちや桜井との関わりの中で学び、成長していく姿をドキュメンタリータッチで描き出していく。
したがって超越的な桜井の姿のみが描かれるのではなくて、どちらかというと横道に逸れてきた1人、1人の人生が桜井によって感化され、ただの遊びだった麻雀が一つの人生修養にまで高められていく様子がわかる。
今、改めて読み返してみると学生の頃にはわからなかった桜井の深い麻雀哲学が、実際の人生の場面でも重要なヒントになっていることがわかる。今でも、桜井章一は数多くのアスリートや、武道家、思想家から尊敬を受けているが、やはりどんなものでも道を極めた人には共通に感じる何かがあるのだ。
麻雀のルールをよく知らない人にも十分楽しめる内容です。ぜひ、ご一読を!